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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
俺はこのとき、北槻中尉が慷堂の前で、教師に訓戒されている学生みたいにしゃっちょこばってるのを見て、なんでえといった気持で、慷堂にわざとなれなれしく、
「先生は自由民権運動をやってられたそうですね」
言い終らないうちに、
「やっぱり、君はまだ若いな」
慷堂はまたもや、ワッハハと笑って、
「あれは、わしがまだ子供の時分のことだ。わしの国でも民権論者が暴動をおこしたから、子供心にも覚えてはいるが、あれは、明治十……七年か」
「でも砂馬さんが先生は自由民権論者だったと……」
「それは、わしの先輩の悲堂先生などのことだ」
その悲堂から自由民権思想を教えられた自分ではあるがと言って、
「わしを、いくつだと思っとるのだ。三年前、君らの仲間が福井大将を襲ったとき、わしはちょうど五十だった」
「へーえ、わりと若いんだな。見たとこ、ずいぶん老けてんのに……」
と俺はおどけて言った。この老けようでは砂馬が「じいさん」と言うわけだし、往年の自由民権論者と見たのも無理はないと思った。
すると、中尉が俺の非礼をたしなめる感じの至極いんぎんな語調で慷堂に、
「先生は支那で苦労なすったので、きっとお年以上に……」