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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

とフケシが言った。

すると、どこからか、

「そういうおめえはクロトンビ……」

「悪かったな。こっちがクロなら、そっちはアカイヌ(放火)……」

やりかえすと、またどこからか、

「アカはアカでも、アカ(凶器)を持ったアカデ(強盗)もいる……」

「アカが三枚……アカタンときたね」

これはアカイヌだった。私語は禁じられている豚箱だから、もちろん小さな声で、

「そうは、いかねえ」

とクロトンビが言葉をはさんだ。

「ブタ箱の短冊じゃ、タンはタンでもブタ(イノシシ)のタンだ」

説明するまでもないことだが、これはリュウコの連中にはおなじみの花札のことで、花札のやれない豚箱ではこんな語呂合せの駄ジャレが、せめてもの楽しみなのだ。

「おっと待ちねえ」

と「牢名主」が貫禄のある声で、

「梅のアカよろしは、もうはいってら」

「あんたのことか? アカキリ(錠前切り)……?」

「俺のことじゃねえ。俺は梅毒じゃねえ」

「ウメはどいつだ……」

「ウメ印でもいいや、俺はアカガイ(女陰)が食いてえなあ」

「アカガイでなくて、アカ鬼(検事)にもうじきお目にかかれらあ」

「そいでアカ落ち(刑務所入り)……」

「赤いオベベか」