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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

(戦闘団)の手で誅殺された。

「戦闘団」というのはS・R党(社会革命党)の別働隊として、かのゲルシュニがつくったテロリスト組織である。団員の一人ジナイーダ・コノプリャーニコワは、一九〇五年のモスクワの反乱鎮圧に当った連隊長(その功で大佐から少将に昇進した)を、やはり駅で射殺した。爆弾を用意していたのだが、同伴の夫人を傷つけまいとして、拳銃を使ったという。軍法会議で死刑を宣告された彼女は、絞首台にのぼると、自分の手で自分の首に縄をまわして、従容として死についた。

こうしたテロリストのことを俺が思い出したのは、波子にこうしたテロリストの心を持ってほしいとか、その心を理解してほしいとか、そういうことじゃない。むしろこの俺自身、こうしたテロリストの心から遠い自分になっていることが、俺の心に壮烈なテロリストの姿を思い浮べさせていたのにちがいない。

俺は二度、死にそこなった。そのあげく、俺は俺の主義主張とは何の関係もない、無意味な、くだらない殺人を犯して、この北の果てに逃げこんだ。

「波子はどうして、こんな俺なんかと結婚する気になったんだい」

「今さら、何言ってんのよう」