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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
兼業の油屋の品が置いてあったものか、建物の中は油が火を引いたもようで、柱まできれいに焼け落ち、三人の死躰も殆んど男女の区別がつかなかった。――寮にはおまさという中年の下女と、五助という下男がいた。五助はかよいで、夕方には自宅へ帰るが、おまさはもちろん住込みであった。しかしおまさも、その日は本所業平にある弟の家へ帰ってい、明くる朝、寮へ戻って来て初めて、その出来事を知った。
町方の訊問に対して、おまさは次のように答えた。
「この寮にはいつもおかみさんがいました、それが十二月の二十九日に、ええ、仏庵さんの亡くなったのが二日ですから、日に間違いはありません」とおまさは云った、「二十九日の朝おでかけになって、あとずっと留守番をしていました、すると六日の午すぎに、日本橋のお店から旦那を戸板にのせて、おしのさんがいらしったんです、ええ、おしのさんはむさし屋の一人娘で、年はたしか明けて十八だったでしょう、おきれいで静かで、おっとりしたいい方でした」
主人の喜兵衛は養子だった。年は四十五歳、三年まえに癆で倒れたが、家付きの妻おそのは病気に感染するのを怖れて、看病は娘のおしのに任せ、自分は寮のほうへ移った。