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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

だが、誰も明確に答えるものはなかった。二天門のような狭い通路と違って、この電燈の遠い広い場所では、むしろそれが当然だと言ってもよかった。

しばらくのあいだ、本堂のまわりから公園の池にかけて、綿密な捜索が行なわれたが、むろん、なんの獲物もなかった。

「今夜は引き上げるほかないよ。警察としてはできるだけの動員をして、浅草公園そのものを囲んでしまうんだね。そんなことをしても、この入り組んだジャングルの豹狩りは、おぼつかないと思うけれど。僕も民間探偵の力に及ぶだけはやってみるつもりだよ」

「ウン、さっそく手配をしよう。夜の明けるまでに何か君に報告できるかもしれんぜ。われわれの仲間には、このジャングルの秘密に通暁しているやつが、たくさんあるんだからね。だが、君のお蔭で犯人が浅草公園へはいったことがわかっただけでも、大した収穫だ」

明智と恒川氏はそんなことを言いながら、二人の刑事といっしょに元の二天門へと引っ返した。そこの敷石にはさいぜんのいざり乞食が、まだ慾張って店を出していた。明智はふと心づいて、ポケットの小銭を探り、彼の前の面桶に投げ入れて通りすぎた。

「旦那、旦那」