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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
半紙型のザラ紙、それに鉛筆の走り書きで、左のような文句がしたためてある。
明智君、さすがに君は名探偵だね。おれの獲物は人形だった。その上、君はおれがここへきたことを知っていた。実にするどいねえ。ブルブルブル、おお怖い。だがね探偵さん、この手紙を読んで君がどんな顔をするか、見てやりたいものだね。おかしくって。一体いつの間に誰がこんなものを君のポケットへ投げ込んだか、わかりますかね。探偵さん、まだちっとばかり修業が足りないようだね。それじゃまた会おうぜ。
人間豹
「フム、驚いたねえ。するとあの公園の闇の中で、人間豹のやつがわれわれの眼の前を歩いていたんだね。そして、こんなものを君のポケットへほうりこんで行ったんだね」
恒川氏が驚嘆した。
明智は何かじっと考えこんでいた。
そんなはずはない。おれは眼の前にいる敵を見のがすほどぼんくらだろうか。しかも、そいつにポケットへ手を突っ込まれるなんて、かつて、経験したことのない侮辱だ。だが、どうも信じられない。おれの神経はからだじゅうに行き渡っているはずだ。ポケットに物を入れられて気がつかぬなんて、おれとしてあり得ないことだ。