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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

吉川英治『剣の四君子・日本名婦伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 页

青空文庫

これは、どういう由縁から起った銘か、瓶割の刀とよばれ、稀代な名刀と知っているので、死せる善鬼もかねがね、師匠が死んだら俺の物と、独り極めにしていたほどの刀だった。

それと、伝書とを、併せて、典膳に贈り、

「さらば今日が、師弟のわかれと相成った。そちは江戸へ戻って、北条殿を訪れよ。委細何事も、安房どのがお心得ある。……何。わしか。入道一刀斎の行く先は、いくらでもある。何の、巷の世間に限ろうぞ。案ずるな。おさらば、おさらば」

追えども追わせず、袂をふり払って、一刀斎は、野面の空の白雲のように、いずこともなく独り去ってしまった。

以来、この人についての消息はない。世間にも伝わらず、典膳の耳にすら聞くことがなかった。

四

典膳がその姓、神子上氏を変えて、小野姓になったのは、師一刀斎とわかれ、北条安房守の斡旋で、幕府へ禄仕するようになってから後である。

同時に、名も改めて、次郎右衛門忠明と名のり、神田もちの木坂に、邸及び道場を賜わり、受禄三百石ぐらいであった。

将軍家師範の家としては、すでに柳生家があり、家格待遇も甚だ彼よりは高い。とはいえ、かりそめにも、小野次郎右衛門を、その次席に登用したことは、けだし野に遺賢なからしむる意味で、北条安房守そのほかの幕臣にしてみれば、かなりな勇断と破格を示したものであった。