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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

吉川英治『剣の四君子・日本名婦伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 页

青空文庫

日本名婦伝

一

二

そのまま。そのままで。……幹子さま、粥湯は匙でお唇へいれておあげなさい」

玖満子夫人のそういう姿へ、鶴子は、眸だけあげて、

「すみません、戦の中で、こんなお手数を皆さまにおかけして」

「何を仰っしゃいます。それは平常のお気がねです。この鎮台にたてこもって一体となった城中の者には、もう自分一個というものはないはずです。あなたは、陛下の赤子をお生み遊ばしたのではございませんか」

「はい。……ありがとうございます。戦のもようは、どんなでございましょうか」

「御安心なさいませ。段山、藤崎台、法華坂などに迫った敵も、もう撃退されました。お宅さまの御主人与倉中佐どのは、午前九時ごろから薩軍の別府大隊の猛攻に当って、片山邸の丘を死守しておいでになります。……あの弾音がそれでございましょう」

「主人は、わたくしの安産したことを、知っておりましょうか」

「樺山中佐どのが、すぐ陣地へ行って、お知らせ申しあげたそうです。……やがて、あの方面の賊軍が退却すれば、きっとすぐに、嬰児のお顔を見に飛んでいらっしゃるに違いありません」

「奥さま。わたくし……それを待っているのではございません。