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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

吉川英治『剣の四君子・日本名婦伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 页

青空文庫

四

誰も答えない。軍医正の面には、むしろ反対の色さえうごいた。しかし樺山中佐は、やはり将軍と同じ気持で云った。

「こうしては如何でしょう。いずれお産婦の日経がすぎれば、お告げしなければなりませんが、今は、やはり隠しておいて、何か方便をもうけて嬰児さんを抱いて来ては」

三浦軍医正も、そう聞くと、賛意を示した。

「それならよいでしょう。本官も憂いとするのは、何せい、今朝お産されたばかりですからな。いかにお気丈でも」

すると、玖満子夫人は、慎しやかなうちにも、信念をもって、

「いえ、隠しても、すぐお覚りになりましょう。それよりは、奥さんにも御名誉を分けてあげて下さい。最大なお悲しみには違いありませんが、女だからとて、すぐ血があがるように御心配あそばすのは、如何かとぞんじます。籠城の者は、総力一体とちかいながら、それでは女子だけが、まだ数のうちに入らないことにもなりましょう」

「むむ、やはりお告げすべきだろう。武人与倉知実中佐の妻を辱めるべきでない。――玖満子、おまえ行け。三浦軍医正といっしょに」

十二

玖満子は、鶴子夫人の産室までゆく間、神を祈った。

最前、鶴子夫人の健気な心構えも聞いているので、信じてはいるが、もしまちがえば、産婦の一命にかかわるかも知れないのである。