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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
吉川英治『剣の四君子・日本名婦伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 页
「いや」すこしあわてて石舟斎が答えた。
「当人を前において申してはいささか不愍にござりますが、剣の強弱としては、この三名の中で、宗矩がもっとも弱いかと存ぜられます」
「……ふウむ、一番未熟というか」
「未熟というおことばは恐れながらちと当りませぬが、弱いことは、慥に弱いと申されます。――けれども不肖石舟斎が宗矩に仕込みましたものは、徒に、強きを能とする剣道ではございません。――また、宗矩の性格に、そうした剣は身に持てぬところでもありますので」
「然らば、何をもって、宗矩は能とするか」
「治国の剣にございます」
「治国の剣。……それは初耳じゃが、どういう意味か」
「世を治めるの剣。民を愛護し泰平を招来するの経世の剣にござります」
「剣にもそういう徳があるか」
「術ではなく、道であります故に。――すでに道である以上、聖賢のこころ、禅の要諦、経世の要義、その道のうちにあらぬはございません」
「すると、学問だな、まるで」
「学問は理念を基とし、人の知性にのみ多く拠りますが、剣は、体得の実相を主として、生死の解決から先にして、ただ実践をもって道に入るものです。故に、これを君主が行って、治国経世に、その理を用いうるにしても、自ら知識から得たそれと、実相体得から入ったそれとは、現わされる御政道の上に、大きな相違があるかと考えられます」