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ちきゅうはっきょうじけん
地球発狂事件
海野 十三
「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页
そのために、問題の某国とはソ連のことではないかという臆説までが飛び出すようなことになってしまった。
そういう最中にソ連側の釈明が、ようやくにして公表されるに至った。その釈明は非常に簡単で、次のようなものであった。
“ゼムリヤ号は赤洋漁業会社の要求によりマルト大学造船科が設計した世界一の新鋭漁船である”
かかる世界に誇るべき国宝級の船舶を何故に我国は自らの手を以て破壊するであろうか、また同船の乗組員は船長以下、国賓級人物を以て組織せられていたが、かかる人物を全部何故に自ら喪うであろうか、釈明文は簡単であったがそれまでにおける世間の無責任なる憶測を一撃氷解させるだけの偉力があった。果して多くの人々が、この釈明に頗る満足の意を表すると共に、かかる立派なる釈明があるなれば、何故にもっと早期において発表されなかったかを遺憾とする者もあった。とにかくこの釈明によって、原子爆弾の秘密実験を行った某国というのはソ連ではなかったことが明瞭となった。この釈明の出た直後は、世界の隅々までにこの報道が行渡り話題としてにぎわった。ドレゴと水戸の両人もまた午後三時のお茶をのみながら、この事について語り合った。