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ちきゅうはっきょうじけん
地球発狂事件
海野 十三
「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页
承前・稀代の怪事
彼はびっくりして顔から頭へかけて手で撫でまわした。ぴりりと痛むところが一箇所みつかった。それは左のこめかみの少し上にあたるところで、毛根にがさがさするほど血らしきものがこびりついていた。
承前・稀代の怪事
「いつ、やったのか。昨夜は大分飲んだらしいが、……はて、気がつかなかったぞ」
ドレゴは寝台を下りた。寝台を下りるとき枕許をふりかえると、枕も夥しい血で赤黒く汚れていた。
そのときも彼はその負傷が、昨夜の梯子酒の行脚のときにどこかで受けたものであろうとばかり考えていた。
彼は、北側の壁にかけてある鏡の前に進み寄った。
「あ! ……」
彼は自分の顔を、幽鬼と見まちがえた。そうであろう、顔色は青く、目は光を失い、頭髪は萱原のように乱れ、そして艶のない頬の上にどろりと、赤黒い血痕が附着しているのであったから。
彼は、非常な後悔の念に駆られた。そして一刻も早くこのような幽鬼の形相から脱れたいと思った。そのために彼は、隣の化粧室の扉を蹴るようにして中へ飛び込んだ。
水をじゃあじゃあと出して、顔をごしごし洗った。首筋から胸へかけても、ひりひりするほどタオルでこすった。