轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
怪しの者
一同顔を見合わすばかりで、誰も急に物を云うものはなかった。一瞬間死の様な静寂が一座を占領した。
怪しの者
「三笠さん、まさか冗談ではありますまいね。今あんたのおっしゃった言葉は、実に容易ならん事柄ですよ。何か確たる証拠でもあって、そういう事をおっしゃるのですか」
やっとしてから、相川操一氏が、詰問するように云った。
「証拠ですかい。……その証拠を掴む為に、わしは昨日から一睡もせず苦労しておりましたのじゃ。ナニ、証拠などなくっても、わしの推理に間違いはないのだが、犯人が一通りや二通りの奴ではありませんのでね。大事を取って、動きの取れぬ確証を手に入れたという訳です。……守君、すまんが、書生部屋に待っているわしの家来を呼んで下さらんか。ここへトランクを持込む様にね」
何となく老人の旗色がよくなって来たので、守青年はいそいそと指図に従った。やがて、例の黒い大トランクを背負った豪傑書生が、ノコノコと部屋に入って来た。
「それを、ここへ卸すのじゃ」
命令に従って、トランクはドッシリと床の上に据えられた。何が入っているのか、ひどく重そうな鹽梅である。
「妖虫事件がどんなに恐ろしいものであったか、今更わしが云うまでもない事じゃが、併し、諸君はまだ事の表面しか見ておられんのじゃ。