轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
「なあに、本当に万一の用心なのですよ。そんな馬鹿馬鹿しいことが起るものですか」
殿村夫人がいくら慰めても、珠子の脅えた心は静まらなかった。今にも、今にも、あの暗い隅っこから、いやらしい毒虫が、ゾロゾロと這い出して来るのだと思うと、独り寝るのも恐ろしく、老女中の寝床を自分の部屋へ運ばせさえした。
谷中の事件があってから五日目の夕方のことであった。珠子は学校から帰って、殿村夫人の旧約聖書の講義を聞いたあとで、もう日の暮れに、疲れた身体を浴槽に浸していた。
女学生とは云っても、卒業期間近の十八歳の珠子は、仮令殿村夫人にでも、肌を眺められるのが恥しかった。どんなに怖くても入浴だけは一人でなければいやであった。それに浴室のガラス窓には、すっかり鉄格子がはめてあったし、壁一重向うの焚き口には女中がいるのだし、窓の外は少しの空地を隔てて、高い塀が厳重に建てめぐらしてあったので、殆ど不安を感じることはないのだ。
珠子は、白タイル張りの浴槽の縁に、断髪の頭をもたせかけて、足を伸ばしてグッタリとなっていた。電燈の光に透いて見える湯の中に、恐ろしい程大人になった桃色の下半身が、異様に平べったく浮いていた。