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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

人形みたいに、ピョコピョコと踊り狂うって云いますぜ。苦しまぎれにですよ。バラバラになってしまっても、まだ苦しさだけは残っているんですね。エ、お嬢さん、恐ろしいじゃありませんか」

なんという残酷な悪魔であろう。暗闇の中で、ボソボソと、一体いつまでいやがらせを云い続けるのだ。うら若い少女の神経が、この上の責苦に耐え得るであろうか。

「ワハハハ……」

突如として、珠子をギョクンと飛び上らせるような笑い声が、闇に谺して爆発した。

「面白くもねえ。子供だましのお芝居は、いい加減によすがいいや。お嬢さん、何もそんなに怖がることあねえ。みんな生き人形の拵えもんだよ。八幡の藪知らずといってね、こりゃお化の見世物なんだよ」

運転助手を勤めた小男が、さもおかしそうに種明しをしてしまった。

アア、そうだったのか。これは見世物小屋の中だったのか。竹藪の迷路を作って、その所々へ不気味な生人形を据え、お客さんを怖がらせて渡世をする、あの古めかしい興行物だったのか。

現代娘の珠子は、話には聞かぬでもなかったけれど、こんな一世紀も昔の見世物を一度も見た事がなかった。それが都会の場末や田舎には、今も余命を保っていようなどとは思いも及ばなかった。