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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页
三
――どうしてまだ帰って来ないのか?
と、北条家では案じていたところなので、権之助はすぐ奥へ通され、書面も沢庵の手で、即座に封を切られた。
三
使いとして、権之助がここに見える前に、この席の人々は、武蔵の就任取止めの沙汰を、或る方面から洩れ聞いていた。
或る方面というのは、やはり幕閣の一員で、その者がいうには、遽かに、武蔵の登用が中止になった原因は、閣老のうちからも、また、奉行所方面からも、武蔵の素姓や行状について、種々、おもしろくない材料が、将軍家へ提出されたためだとある。
不合格となった、何よりもいけない点は、
――彼は仇持ちだ。
という風評が専らにあることだった。しかも非は彼にあって、彼を仇と狙って永年辛苦している者は、もう六十路をこえた老婆だと聞えたので――同情は翕然としてその年寄にあつまり、武蔵には反対なものが、御採用という機会に、一時に現れたものらしいとの話であった。
どうして、そんな誤解が生じたのかについては北条新蔵が、
(いや、そのことなら、その策で、当家の玄関へ、執こくやって参りましたよ)
と、留守中、本位田家のばばが、武蔵の悪たいを並べて立ち去ったことを、初めて、父と沢庵の耳に入れたのだった。