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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

四

城太郎も、もう以前の子どもではない。身を退けながら、ばばの体を前へ突き返していた。

「わ、童ッ。やりおったの」

草むらの中へ、首を突っこみながら、彼女は喚いた。頭を土にぶつけても、彼女の頭のなかにある、小童の城太郎という観念は脱けなかった。

「何を」

と、城太郎も喚いた。そして踏めば折れもしそうな、ばばの背ぼねへ、足を乗せ懸け、じたばたする手を苦もなく逆に捻じ上げてしまう。

彼もまた、彼である。そのばばが歯がみを、憐れと見ている勘弁などはないのだ。小童の時代を抜けて、身なりこそ大きくなったけれど、体の大きくなったという事実だけで、大人になったとは誰にでも許せるものではない。

もう十八か九。よい若者にはちがいないが、気持は多分にまだ乳くさい。それに積年のうらみともいえる憎悪が積り積ってのことである。

「どうしてくれよう」

引摺って来て、山神の御堂の前にたたきつけ、なお、闘志を亡くさない細い体を踏まえながら、殺してはまずいし、生かしておくのも癪なこのばばの始末にちょっと当惑した。

いや、それよりは、先におばばの指図で、下ノ庄の屋敷とかへ、手取り足取りして連れ去った――お通の身がなお、そうしている間も案じられるのだ。