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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

五

控え所詰お役人方までお申し入れ願わしゅうございます」

この日、武蔵はもとよりただ一名であった。しばらく待つ間に、此方へとべつな案内が先に立つ。

「お沙汰あるまでこれにお控えください」

蘭の間とでもいうか、絵襖いちめんに春蘭と小禽が描いてある。長さ二十畳の広い部屋である。

茶菓が出る。

人の顔を見たのはそれだけで、後はおよそ小半日も待たされた。

襖の小禽は啼かず、描いた蘭は香いもせぬ。武蔵は、欠伸を催して来た。

五

やがて、閣老の一名であろう、赭顔白髪の見るからに凡庸でない老武士が、

「武蔵どので在わすか。長々お待たせして、無礼おゆるしを」

と、あっさりそれへ出て来て坐った。ふと仰ぐと、川越の城主である酒井忠勝であった。けれどここでは江戸城の一吏事に過ぎないので、侍者一名を側につれただけで、至極格式に囚われていないふうである。

「お召しに依って」

と、武蔵が――これは先方が威儀作ろうと否とにかかわらず――長者に対するいんぎんな礼を執って、ひたと、平伏しながら、

「作州牢人、新免氏の族、宮本無二斎がせがれ武蔵と申しまする者、将軍家御内意の趣に、御城門先までまかり出でましてござります」