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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

七

きん作とかいう十六歳の子をその合戦に立たせて、そのまま、ふた目とも会わなかった母親は、二十一年も経った後まで、そのかなしみを忘れかねて、子の後生を祈りつつ、諸所をさまよって、亡き子の供養を心がけていたものとみえる。

「……さもあろう」

又八という子を持つばばには、同じ母なるその親の気もちが、ひしと分る。

「南無……」

ばばは、岩の壁へ向って、掌を合せ、嗚咽しないばかり、落涙していた。――そしてややしばし、泣き暮れていたが、われに回ると、その涙の合掌の下に、お通の顔があった。すでにこの世の朝の光も知らず、冷たい人となって、横たわっていた。

七

「お通っ……。わるかった。このばばが悪かったぞよ。ゆるしてたも。ゆ、ゆるして……たも」

――どう思ったのか。

ばばは、いきなりお通の体を抱きあげてさけんだ。悔悟のいろが、ばばの面には溢れていた。

「恐ろしや、恐ろしやの。子ゆえの闇とは、このことか。わが子可愛さにひとの子には、鬼となっていたか……お通よ、其方にも、親はあったものにのう。親御から見たらこのばばは、子のかたきじゃ、羅刹じゃ、……。ああわしのすがたは夜叉ともみえていたであろう」