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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页
――負けるか! 汝ごときに。
と、伊織も、見つめる。
長い間を、まったく呼吸もせずに、そうしていたのであったが、やがて、伊織の眼の力が、彼を、圧伏してしまったものか、野葡萄の葉が、カサと揺れたせつなに、むささびの影はどこへやら消えてしまった。
「ざまをみろ」
伊織は、誇った。
彼はびっしょり汗をかいていたが、何だか胸がせいせいして、こんど師の武蔵と立合う時には、今みたいに睨み返せばいいんだと思った。
彼は、藺すだれを下ろし、草庵の中で眠りについた。灯を消しても、藺すだれの隙間から、露明りが、青白く映している。
――彼自身では、横になると同時に、すぐ眠りにはいった気がしていたが、頭の中には、何か光る珠のような物が、ぎらぎらしていて、それがだんだん、むささびの顔のように、夢うつつの境に見えて来るのだった。
「……ウウム。……ううむ」
何度も彼は呻いた。
そのうちに、どうしても、その眼が夜具の裾のほうにいる気がしてならないので、むくり起き直ってみると、果たして、薄明るい蓆の上に、一匹の小動物が、くわっと自分を睨みつけているのだった。
「アッ、畜生っ」
枕元の刀を把って斬るつもりの伊織は、もんどり打って、刀と共に転び、さっと動いた藺すだれに、むささびの影が黒く止まっていた。