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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页
五
「…………」
武蔵自身は、当然なことと、彼の感服にあまり興もない顔つきだった。むしろ、自分が主の目企みの裏を掻いたために、いつまでも、この座敷にはいり難くて、壁の外に佇んでいる者が気の毒になったので、
「どうぞ、但馬守様に、お席へお着きくださるよう、これへ、お迎えを願いまする」
と、いった。
「ええ」
これには、安房守ばかりか、沢庵もちょっと驚いて、
「どうして、但馬どのと、お許に分っておるのか」
と、訊ねた。
武蔵は、但馬守に、上座を譲るべく、席を退がりながら、
「暗うはござりましたが、あの壁の陰にひそと澄んでいた剣気、またここのお顔ぶれといい、但馬様を措いて、余人であろうとは思われませぬ」
と、答えた。
五
「むむ、御明察」
と、安房守が感嘆して、頷いて見せると、沢庵も、
「その通り、但馬守どのに相違おざらぬ。あいや、物陰のお人、もう知れておる。これへござあってはどうか」
室外へ向っていうと、そこで笑い声がひびいた。やがてはいって来た柳生宗矩と武蔵とは、いうまでもなく、初対面であった。
その前に、武蔵はすでに、末席に身を退いていた。但馬守のためには、床の間の席が開けてあったが、彼はそこへ坐らずに、武蔵の前へ来て、対等の挨拶をした。