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おもいちがいものがたり

思い違い物語

山本 周五郎

「労働文化」労働文化社、1950(昭和25)年9月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,840 字 · 88 页

青空文庫

二の三

そして脇玄関のほうへとびだし、どこかの障子でも蹴倒したのだろう、ばりばりがたーんという物音をさせ、さらにがたぴしどたばた賑やかな音響を展開しながら、ついに外へと出ていった。

二の三

そのとき山治から満信城代へ遣った手紙は重要な意味をもっていた。

すなわち、この両者は早くから家中の綱紀粛正を考え、弛廃し堕落した政治のたてなおしを計画していた。尤も両人にすればそれほどむきになりたくはない、政治というものは、それ自身が横暴と不正と悪徳を伴うものであって、どんなに清高無私の人間がやってもいつかは必ず汚濁してしまう。寧ろそういうものなしには政治は有り得ない、もう一つ押し進めるとそれが自然でさえあるかもしれない。という感じであってみれば、粛正や改革はやってもやらなくても同じことで、なるべくなら知らん顔をしていたいのである。ところがそうしていられなくなった、実にこの世はうるさい仕組になっているものだが……。

時と処に関係なく、大義名分とか公明正大とかいうものを信仰的に固執して、自分以外のあらゆる人間を不正不義、悪漢堕落漢であると罵倒し憎悪する人種があるものだ。