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おもいちがいものがたり

思い違い物語

山本 周五郎

「労働文化」労働文化社、1950(昭和25)年9月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,840 字 · 88 页

青空文庫

四の五

「なお私の検算したもの以後、今日までの金額を合計すればいかなる数字が表われますことか、しかも責任者はみな揃っているのですから、殿には御入用に関する限り今後は絶対に御不自由はこれなしと申上げることができます。但し、かかる家臣の努力と苦心についてはお忘れなきよう、僭越ながら念のため言上つかまつります」

そして、不審の点があったら、詳しく帳簿を当ってみて貰いたいと云い、静かに座を下って平伏した。

四の五

泰三の投じた一石によって、どんな騒ぎが起こったかは読者の御想像に任せるとしよう。ただ表面に現われた変化は、納戸奉行の金吾六平太とその一派が退職し、それらに代ってまったく新たな系統の人物が抜擢されたこと。満信城代が「老年任に耐えず」と云って引責辞職し、典木泰助が城代に就任したこと、以上の事は記して置きたいと思う。

「あいつを甘い粗忽者だと思ったのはたいへんな間違いだった」金吾一派はこう云っていた、「――まんまと裏を掻かれた」

「藪を突ついて蛇を出した」野村とその同志たちはこう云った、「――われわれの味方だと思ったのに、とんでもない逆手を食った」

泰三の検算による「特別御用金」