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おもいちがいものがたり

思い違い物語

山本 周五郎

「労働文化」労働文化社、1950(昭和25)年9月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,840 字 · 88 页

青空文庫

「一連の醜団」なるものは、代々その局に当った人間がみなそうであった。正面から摘発して、現「醜団」に肚を据えられると、時効などという便法のない時代のことだから、遡及的にどこまで拡大してゆくかわからない。それでは困るので、これが対策には慎重な考慮がはらわれなければならなかった。

然らば両老職はいかなる策をたてたかというに、まず泰三を使者として、密書がましいものの遣り取りから始めたのである。実に年の老けた人間というものは狡猾だと思うが、その効果は意外に早く、意外なかたちで顕われたのである。

泰三は右衛門の手紙を持って満信へゆき、満信の返書を右衛門に持って帰った。

「奇態なことをするおいぼれ共だ、どういう魂胆でこんな人を小馬鹿にしたようなことをやるのかしら」

二日おき一日おき二日おきといったぐあいに、山治と満信を往復するので、泰三は気持が草臥れてきて、歩きながらよく独りで不平を云った。

「これじゃあまるで飛脚に雇われて来たようなもんだ、いまに道筋のやつらがすっかりおれのことを覚えちまって、ちょいとあたしのも頼みますなんか云いだしたらどうするつもりだろう」

「ははあ、また走り使いか」