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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

――それから急に痒くなって、敵の大軍をみなごろしにするのだ、叡山の焼討ちだなどと、肌着の大掃除をやっていたところでございます」

「はははは。そうか。こう長の陣では、虱も籠城につかれたろう」

「けれど、三木城とちがって、ここには兵糧が豊かですから、焼討ちでもしないと陥ちません」

「もうよせ。そのはなしは。わしも痒くなった」

「殿さまも、もう幾十日、お風呂をお浴びなさらないかしれません。きっと殿さまのお肌にも、雲霞のごとく、敵が立て籠っているかもしれませんよ」

「佐吉。よせと申すに」

秀吉は、わざと、彼らに体をゆすぶってみせた。小姓たちは、自分ばかりが虱たかりでないことを証明されると、大よろこびに歓んで、

「ハハハハ」

と、雀躍りせんばかりくるくる廻った。

すると陣幕の外から陽気な笑い声と温かい煙にみちたここを覗いて、

「お小姓組の黒田松千代どのはここにおいでか」

と、ひとりの兵がたずねていた。

「はいッ、おります」

立ってゆくと、それは父の部下だった。

「御用の折でなければ、ちょっとお越しあるようにと、あちらのお小屋で、お父上が召されておられますが」

松千代は、秀吉の前に行って、