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にほんばし

日本橋

泉 鏡花

「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页

青空文庫

四十二

取留めは無いのだけれども。

その爺さんが、コツンコツンと斧を入れる。が、斧の音は、あの、伐木丁々として、百里も遠く幽だのに、一枝、二枝、枝は、ざわざわと緑の水を浴びて落ちる。」

四十二

「三枝、五枝、裏掻いてその繁茂が透くに連れて、段々、欄干の女の胸が出て、帯が出て、寝着姿が見えて、頬が見えて、鼻筋の通る、瞳が澄んで、眉が、はっきりとなる。縺毛がはらはらとかかって島田髷が見えた。

川の水が少し渺として、月が出たのか、日が白いのか、夜だか昼だか分らない。……間がおよそどのくらいか知れないまで遠くなる、とその一段高い女の背後に、すっくと立った、大な影法師が出た。一段高いのに、突立ったから胸から上は隠れたが、人とも獣とも、大な熊が蔽われかかるように見えたんだがね。」

「ちょっと待って!」

お孝の怯えたらしい慌しさ。が沈んで力ある声に、学士は夢から現の世に引き戻されて、

「ええ、」と驚く。

「ここを抱いていて下さい。」

その声は、もう静であった。掻巻越に、お孝は学士の手を我が胸に持添えて、

「さあ、話しておくんなさいな、――身に染みるわねえ。」

「たわいは無いんだよ。