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にほんばし

日本橋

泉 鏡花

「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页

青空文庫

頭を釘

六十

「ちょっと……」

葛木は急に遮りつつ、

「ただ聞いてはいられない、……お互に人の児だよ。お前、小児を捨ちまったと云うのは? 構いつけない、打棄ってあるという意味なのかい。」

「そうでねえです。」

「人に遣ったという事かね。」

「違う。」と、ぶっきらぼうに言う。

「棄子をしたか。」

と小さな声。

頭を釘

六十

赤熊は、まじまじとして、頽然と俯向いたが、太く恥じたらしく毛皮の袖を引捜すと、何か探り当てた体で、むしゃりと噛む。

葛木は眉を顰めて、

「ちょっと、小児も小児だし、……前刻から、気になるが、とにかく、色事の達引中だ、なあ、まあ。……それに、そんな事をしてくれては不可いじゃないか。見ていられない、……何を食うんだ。」

「はあ、これかね。」

と、食った後の指を撮んで、けろりとした顔を上げて、気も無い様子で、

「虱だと思ったかね、へへ、違うですが。大丈夫だで、国手。脂の抜きようが足りんだった処へ、寝るにも起きるにも脱がねえもんで、こりゃ、雨な、埃な、日向な、汗な、膏で熊の皮に湧いた蛆だよ。」

「え。」

「虫ですがい。豪く精分の強い、補剤になるやつで、なあ。」

伝吾は厚ぼったい口をだらりと開けつつ、