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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页
「鳶につつかれるくらいが落なんだよ。どこ、何、お茶、お茶、どこへお茶を買って来、」
とちょっと途絶える。
お千世は飴を買ったのに。
「何だ、飴だえ。私はまたお前さんの身のものは、売買ともにお茶だと思った。……そう飴を、お茶うけに、へへん、」
と笑い上げたは、煙草を吹いたぞ。
「やっぱりお茶に縁が有らあね、……世間じゃお天道様と米の飯は附いて廻ると云うけれど、お前さんにゃ、貰水とお茶がついて廻るんだ。お茶の水は本郷の名所だっけ。日本橋にゃ要らないもんだ。
ええ、姉さんのだ、嘘をお吐き。……いいえ、姉さんがまた吩咐けたって、口ばかりさ、直ぐに忘れて、きょとんとしている事は知ってるじゃないか。そして、食べさしちゃ悪いんだ。狂女に食ものッてね、むしゃむしゃ食散らかされて堪るものかな。
食べると水膨んだよ。……あの上水膨れちゃ、御当人より傍のものが助からないよ。人が乾殺しでもするように、陰へ廻っちゃ出過ぎたがる。姉さんもまた、人聞きの悪いほど、何だかだって食べたがる。精々何にも当飼わないで、咽喉腹を乾しとかないと、この上また何かの始末でもさせられるようじゃどうすると思うんだ。