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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页
お千世も同じ、芸者はお互い。筆がしらでも中軸でも一味についた連名の、昼鳶がお尻を突く、駿河台の水車、水からくりの姉さんが、ここにも一人と、飛込もうか。
それには用意がなければならず、覚悟もしないじゃ出来まいが、自分へ面当なら破れかぶれ。お千世へだけの事だったら、陰で綻を縫うまで、と内気な女が思直す。……
またその時、異う悪黙りに黙ってしまって、ふと手の着けられぬまで、格子の中が寂寞して、薄気味の悪いほど静まった。
これぞ、お千世の客が来て、門に近いのを、やっと囁き得た事を頷かせる。
「ええ。」
咳を優しくして、清葉が出窓際の柳の葉の下を、格子へ抜けようとする、とあたかもその時。
はらりと音して、寝ながら投げた扇が逸れたか、欄干を颯と掠めて、蒔絵の波がしら立つごとく、浅翠の葉に掛って、月かと思う影が揺ぐと、清葉の雪のような頬を照らす。……と思わず、受けたは袱紗の手。我知らず色傘を地に落して、その袖をはっと掛けて、斜めに丁と胸に当てた。
清葉は前刻から見詰めた扇子で、お孝の魂が二階から抜けて落ちたように、気を取られて、驚いて、抱取る思いがしたのである。