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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页
夜分、我々が通行するのに、こういう事は間々あります。迷惑でも御職務に対して敬意を表する。それにしてもです。唯今までさえ、立入過ぎたお尋ねのなさり方ですが、単に御熱心であるからだ、と思ったんです。
この上何を聞くんです。まったく可い加減にして下さい。……用が有るなら住所へお尋ねを願いましょうかしらん。」
「さよう、当方の都合に因っては住所へもお尋ね出来ます、また……都合によっては、本署へ御同行も出来得るですでなあ。」
「ええ。」
さすがに葛木は一驚を喫した。余の事である。
「けれども、御答弁に依って、そこまでに立到らない事を、紳士のために、本職は欲するでしてな、はあ、ああ。」
「早くお尋ねを願います。何です、とにかく、困りました。僕は不安に堪えません。」
「すると、むしろここで埒を明ける事を御希望になるのですね。」
「勿論、是が非でも連れて行こうと思えば、それが出来ない貴下じゃないんだから。」
「さよう。しからば反抗をなさらんで、柔順にお答えをなさるが可い。」
と入交いになった向を直して、巡査は半身を反るがごとく、肩を聳やかして衝とまた角燈を突附けた。
葛木は、その忌わしさと、癇癪にぶるぶるする。