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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页
」
事実元禄義士扱い。で、言葉も時代に、鄭重に、生真面目な応対。小児等は気を取られて、この味噌摺坊主に、笑うことも忘れて浮りでいる。
「ええ、さて各自には、すでに御本望をお遂げなされたのでありまするか。それとも、また今夜にも吉良邸へお討入りに相成りますかな。」
小児等は同じように顔を合せて、猿眼に、猫の目、上り目、下り目、団栗目、いろいろなのがぱちくるのみ。
自ら名告った味噌摺坊主は、手甲の手の腕組して、
「ははあ、御思考最中と見えますな。いや、何にいたせ、貴方がたを義士の御連中とお見掛け申して、ちと折入って、お話し申したい事があります。余り端近。な、ここは余り端近で、それそれ通りがかりの人目も多い。もそっとこれへ、ちょっと向うへ。あの四角の処まで、手前と御同道が願いたい。
決して悪いことではありませぬ。さあさあ誰方も。」
と云うより早く、すたすたと通りの方へ。
松屋あたりの、人通。どっちが(端近。)なのかそれさえ分らず、小児等は魅せられたようになって、ぞろぞろと後に続く。
電車が来る、と物をも言わず、味噌摺坊主は飛乗に飜然、と乗った。で、その小笠をかなぐって脱いだ時は、早や乗合の中に紛れたのである。