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うんせききこう

柳宗悦 民藝紀行

柳 宗悦

柳宗悦『柳宗悦 民藝紀行』。同一底本的分册已合并为一书。收入:雲石紀行、沖縄の思い出、思い出す職人、樺細工の道、北九州の窯、現在の日本民窯、小鹿田窯への懸念、全羅紀行、台湾の民芸について、多々良の雑器、地方の民芸、苗代川の黒物、日田の皿山、北支の民芸(放送講演)、益子の絵土瓶、蓑のこと、野州の石屋根、陸中雑記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,050 字 · 276 页

青空文庫

ある坊さんの説教に列して、金剛経にある「応無所住而生其心」(応に住する所なくして、而も其の心を生ずべし)という句の深さを聞かされました。坊さんはこれを棒読にして「オウムショジュウ、ニショウゴシン」といいました。もとより無学なお婆さんのこと故、お経のむずかしい講釈などは分りません。またその漢語を読む学力もありません。しかしただ一つお婆さんはこの句がとても有難い句なのだという教えを、端的に惑わずに信じ入りました。そうしてうまく漢文の句を覚えられないので、自己流に「大麦小豆、二升五銭」(オオムギショウズニショウゴセン)と暗記し、有難く頂いて、断えずこれを口ずさみ、その句の中に自分を棄ててかかりました。お婆さんには知的な判断などの持合せは全くありません。それ故そんなものの入る余地もありません。ところがどうでしょう。その結果全く「住する所なき」境地に入り、そこから流れ出る心の中に活きたのであります。誠に文字通り「応無所住而生其心」となり、そのお婆さんの「大麦小豆、二升五銭」という呪文のような称念は、病人をすら癒すに至ったと申します。面白い話ではないでしょうか。