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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
手柄でも何でもありません」
「学校の方はお忙しいんでございましょう?」
「子供相手ですから、講義は知れたものですけれど、事務が厄介です。早く母校へ帰りたいです」
「お帰りになれば教授ね」
「助教授です、初めは。僕は卒業した時、助手になって母校に残れと言われたんですけれど、助手は二十円ですからね。もうこの上親の脛を齧りたくないと思って、稼ぐことを考えました」
「…………」
「しかし事務なんかで頭を使うくらいなら、一層のこと潰しにしてしまう方が宜かったんです」
「潰しと仰有いますと?」
「会社へ入ることです。三井へでも三菱へでも入れたんです」
と瀬戸君は本気になるほどいけない。成績の好いことはもう充分認められているのだけれど、相手二人と比較して貰いたいのだ。
「何かもっと面白いお話ありません?」
「さあ」
「写真帳、御覧に入れましょうか?」
と佳子さんは退屈してしまう。
しかし瀬戸君も緊張していないと調子が好い。安達君とは正反対だ。
「僕、これでも人命救助をしてお上から御褒美を貰ったことがあるんですよ」
「本当?」
「中学生時代に郷里へ帰った時です。海水浴場でした。泳ぎを知らない巡査を助けたんです」