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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
去年あたりは切符を工面して、弼君を早慶戦見物につれて行った。
「姉さんも行きたいんですって。野球大好きですから」
と弼君が言った。これは佳子さんが弼君を通して意思を発表したのである。
安達君が帰り着くと、奥さんは待っていたようにお茶の間へ呼び込んだ。
「小宮さんはお留守でございましたの?」
「はあ。馬鹿を見ました」
「御苦労さまね。瀬戸さんは?」
「三越で別れて来ました」
「先刻の続きを申上げましょうか?」
「何うぞ」
と安達君は端坐した。
「ニコ/\なさって、現金ね」
「迚も好いことがあったんです。三越で佳子さんに会いましたよ」
「まあ!」
「弼さんと一緒でした」
「お言葉を賜わりまして?」
「はあ」
「好い幸先ですわ」
「僕も然う思っています」
「けれども、あなた、瀬戸さんにこのお話、申上げちゃ駄目よ」
「何故ですか?」
「就職問題とは違いますから、少し目鼻のつくまでは誰にも秘密にして置く方が宜うございますよ」
「それは分っていますけれど、瀬戸君は兄貴分ですから、相談して見たんです。何か好い分別があるかと思って」
「正直ね、あなたって人は。私、硝子の中の熱帯魚を見ると、いつもあなたを思い出しますのよ」