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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「お憤りになっちゃ駄目よ」

「今の今まで奥さんを相談相手だと思っていたんです」

「困りますわ、私、間に挾まって」

「僕は男が立ちません。正々堂々の競争をしようと吉川君に言い切ったばかりです」

「譲歩して恩に着て戴く法もありますわ」

「いや、譲歩すれば敵わないからだと思います。吉川君は何処までも僕を見括っているんですから」

「吉川さんはもうお申込みになったと仰有いましたか?」

「はあ。仲人は丸尾夫人です」

「まあ!」

と奥さんは顔色が変った。

「有力ですよ、あの奥さんなら」

「…………」

「此方は見放されてしまったんですから」

「見放すなんてことはありませんわ」

「宜いです、もう」

と安達君は投げるように言って腕組をした。決して宜いのではない。

その界隈で一番綺麗な奥さんは大谷夫人か丸尾夫人かという評判だ。何方も自信が強い。そうして事実評判を裏書する丈けのことがあるから、互角の競争になっている。丸尾夫人は大蔵省の高等官の奥さんだ。大谷夫人よりも二つ三つ若い。しかし美人の年というものは本当のところが分らない。五つも六つも若いように吹聴している大谷夫人は、年の多い丈けが自分の方が負け目だと思っている。