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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
オヤオヤと思って、それでは助役の中谷銃二に取次ぎを頼むと、今議場に出て、市長に代って奮戦の真最中だとのことだった。それなればというので僕は勝手知ったる議場の方へ行ってみることにした。
なるほど議場は、め組の喧嘩のように殺気立っていた。
正面の演壇の方に眼を向けると、壇上にスクッと立ち上って拳を盛んにふりまわしているのは、外ならぬ動坂三郎氏だった。氏の身辺には、二、三十名の壮漢がギッシリと取囲み、壇上壇下一帯を占領しているらしかった。その横後には、中谷助役以下の当局者がズラリと並んでいたが、いずれも蒼白な面を伏せて、罪人の如くオドオドしていた。市長席は空席で、まるで歯の抜けたような物淋しさを見せていた。――動坂氏は満面を朱にして猛虎の如く吠える。……
「……土地払下案について重大なる質問をしたのに、市長及び当事者が答弁をしないとは何事であるか。剰さえ、吾等市民代表者の切なる要求を斥け、一件書類を金庫から取出して見せることを拒むとは横暴とも理不尽とも、実に言語道断の振舞いである。未だ曾て三百万人の市民は、斯くの如き侮辱を蒙り、斯くの如き暴政に蹂躙せらせたことはないのである。