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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
僕は衣服の上から露わに女の全裸身を感じた。そこは一台の円い卓子と二脚の壊れかかった肘掛椅子とがあるっきりの、実にお粗末な小室だった。
「お前さんは、割合に尤もらしい顔をしているのネ、写真で見るよりは……」と、向い側に座った女は、莨の煙を吹き吹き、正面から僕のことを冷やかした。
「写真? 僕の写真を、何処で……」
「何処でって、忘れっぽいのネ。お前さんの部屋に飾ってあったじゃないの」
といって、女ははだけた胸の間から、ハガキ版の写真を摘み出した。
「ああ、……」
僕は驚いて立ち上った。それは机の前に立てて置いたものだったけれど、真逆こんな女が持ってきていようなどとは気がつかなかった。
「いいじゃないの」女は不貞腐れな態度を見せて、「この写真じゃ、随分いい男だと思って貰ってきたんだけれど、お前さん随分背が低いのネ」
「ああ、すると僕の家に侵入したのは、貴女だったんですネ」
「あら、まだ気がつかなかったの。呆れるわねえ。わざわざ花束まで机の上に捧げて来たのに。……」
「では、時計だの十銭玉だのを取ったのも。……」
「まあ察しが悪いのネ。一杯お酒でも飲むといいわ。いま取ってきてあげる。