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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

中には、気早にも、もう素裸体になって、汚らしい水に飛び込む、野蛮人みたいな腕白小僧達もあった。

大滝の巾十間、落差二丈もあるだろうか、巨大なビイドロの如き落口、白浪相噛む滝壺、四隣を震わす鼕々の音、小さいながらも、滝というものの美しさを凡て備えていた。高が水門と油断をして、滝壺へ舟を近づけ、つい命を奪われるものも、年に一人や二人はある。滝壺は非常に深くて、その底に何やら魔のものが棲んでいるなどと、あらぬ怪談さえ生れて来るのだ。

だが、土地の子供は河童だ、危険な箇所を心得ていて、恐れもしないで、泳ぎをやる。で、その時、一つの小舟から、クルクルと素裸体になった十五六歳の我鬼大将が、真黒な身体を逆さにして、ドボンと滝壺近くの深味へ飛込んだのである。

「待ってろよ。いいものを探して来てやるから」

少年は舟の上の仲間に、そう呶鳴って置いて、海豚の様に身をくねらせて、水底深くもぐって行った。舟遊びの人が落した財布などが、時として底の泥深く埋まっていることがあるからだ。

彼は水中に目を見開いて、底へ底へと下って行った。海底の様に藻の林はないけれど、その代りに、木切れ藁束ドロドロの布屑、犬とも猫とも知れぬ小動物の白骨などが、濁った水底にブヨブヨと蠢いている様は、海などよりも一層不気味に物凄かった。