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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
悪魔の製造工場
しかもその偽物を勤めている男は最も信頼すべき団員の一人、竹田という共産主義者の筈だ。そいつがどうして、こんな馬鹿馬鹿しい裏切りを始めたのであろう。大河原首相とても同じこと、偽令嬢と偽秘書官が麻酔剤を飲ませて、ちゃんと偽物とのすり替えが出来ている手順ではないか。それが思いもかけずこの始末は、どうしたと云うのであろう。
では野村秘書官は偽物ではないのかと思うと、今の言葉ではそうでもないらしい。本物でもなく、代役の竹田でもないとすると、この男は全体誰なのだ。
「君は誰だ。君は誰だ」
赤松氏はしどろもどろになって叫んだ。
悪魔の製造工場
「僕は明智小五郎だよ」
野村秘書官は、そう云いながら巧妙な鬘や附眉毛や含み綿を取除いてつるりと顔を撫で下した。
「どうだね。君達の工場の人間改造術と僕の変装術と、どちらが便利だね。ハハハハハ」
驚くべし。そう云って笑ったのは、まぎれもない名探偵明智小五郎だ。額の皺から、唇の曲線から、目の大きさから、声の調子に至るまで、一瞬間までそこにいた野村秘書官の面影は、どこを探しても発見することは出来なかった。
「僕は君達の巣窟にとらわれていた。