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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

愛之助暗闇の密室にて奇妙な発見を為すこと

愛之助は、オズオズと上げ蓋に近づいて、ソッとそれを開き、目をつぶる様にして縄梯子を投げおろした。

下でも躊躇の気配がする。それを主婦がうしろから小声で勇気づけている様子だ。

暫くすると、縄梯子がピンと伸びた。昇って来る。女の身で、縄梯子を。だが、あとで聞いた所によると、贅沢に慣れた上流階級の人達には、男にも女にも、恋の冒険を象徴するかの如きこの野蛮な縄梯子がひどく御意に召しているとのことであった。

先ず見えたのは、美しく櫛目の通った丸髷だ。それから艶々した紅色の顔、(というのは電燈が赤いからで)成熟した中年婦人の胸、等、等、等、等……

愛之助暗闇の密室にて奇妙な発見を為すこと

その人がどんな人柄であったか、どんな身分であったか、初対面の彼等が何を語り合ったか、赤色電燈の光が、かの鏡の壁にもまして、如何に………………たか、等々々については、この物語の本筋に関係もなく、憚り多き事柄なので、凡て略し、ただ当夜青木愛之助はいつもの様に失望しなかったとのみ申添えて置く。

だが、偶然にもその深夜に起った、低音電鈴事件については、お話の順序として、是非記して置かねばならぬ。