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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

両人奇怪なる曲馬を隙見すること

君は僕と一緒にそこへ行って見る勇気はないか。僕は今夜こそ、あいつを尾行して、住所も名前も確めてやろうと思っているのだが」

品川は中々返事をしなかった。だが、長い躊躇のあとで、とうとう決心をして叫んだ。

「行こう。俺もそいつの正体を確めないではいられない」

両人奇怪なる曲馬を隙見すること

その夜十一時頃、青木と品川とは、已に三浦の、家の赤い部屋の外の暗闇に潜んでいた。お神は二人連れでは危険だからと云って中々承知しなかったが、青木が札びらを切って、やっと納得させた。品川は色眼鏡とつけ髯で変装していた。全く同じ顔の客が二人来たのでは、お神の疑いを招くからである。

青木はたった一つの小さな節穴に目を当てて、今か今かと登場人物を待ち構えていた。品川は青木に代ってそこを覗く勇気はなく、ごみだらけの板敷の隅っこに蹲って、何かの黒い塊みたいに、身動きもしないでいた。

青木の目の前には、真赤な幻燈の様に、部屋の一部がまん丸に区切られて見えた。向う側の板壁、そこに貼った細い模様の壁紙を背景にして、丸胴の桐の火鉢と、妖婦の唇の様に厚ぼったくふくれ上った、緋色の緞子の蒲団の小口とが視野に這入った。