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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

愛之助遂に大金を投じて奇蹟を買求めること

「本当のことを云うとね、僕は今晩ある男をピストルで打殺したんだよ。その男の死骸は、今でもある空家に転がっているんだよ。だが、君は、真から僕の味方なんだろうね」

愛之助は網目に血走った眼を、物凄く相手の顔に据えて、果し合いでもする様な真剣さで、囁いた。「大丈夫です。僕の目を見て下さい。刑事の目じゃないでしょう。僕は犯罪者の味方なんです。犯罪者をお得意にする、奇蹟のブローカーなんですから。でも、僕はコソ泥棒なんか相手にしませんよ。僕の御得意は一万円という代金が支払える程の、大犯罪者ばかりです」

青年も大真面目で、夢の様なことを口走った。

「よし、じゃ本当のことを話そう。僕のやったことを詳しく話そう」

愛之助は意気込んで、酒臭い唇を、青年の恰好のよい耳たぶにくっつけた。

愛之助遂に大金を投じて奇蹟を買求めること

愛之助は廻らぬ呂律で一通り事の次第を話したあとで、込み上げて来る涙を隠そうともせず、丁度泣き上戸の様に、メソメソしながら続けた。

「相手は殺人鬼なんだ。僕の妻が殺されかけていたんだ。で、僕の行為は一種の正当防衛に過ぎないのだ。併し、法律はそんなことを斟酌してくれない。