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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

何かしら非常に大がかりな陰謀を企らんでいる、その準備時代なのではあるまいか。少くともここに一人、科学雑誌社長品川四郎は、それを確信していた。彼はなんでもない人に言葉をかけられた丈けでも、ビクッとして飛上る程、神経過敏になっていた。

果然、品川の予想は的中した。一ヶ月の後、七月半ばのある夜のこと、幽霊男は、実に奇妙な場所で奇妙な仕草をしている所を、発見された。しかも、そんな奇妙な仕草をしながら、彼は一体何をしていたのか、どんな犯罪が行われたのか、少しも分らないという、非常に変挺な事件なのだ。

その夜更け、A新聞社会部の記者と写真部員とが、肩を並べて、麹町区の淋しい屋敷町を歩いていた。A新聞では当時「大東京の深夜」という興味記事を連載していて、この二人の記者は今夜少し方面を変えて、富豪街探訪を志したのであった。

彼等が今さしかかった町は、富豪街中の富豪街、片側は何侯爵の森林みたいな大邸宅、片側は見上げる様な高い石垣の上に、ずっと一丁程もコンクリート塀の続いた、千万長者宮崎常右衛門氏邸の豪壮な構えだ。

「この途方もない石垣の下の、溝の中に、菰を被って寝ている乞食婆さんという図はどうだい」