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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

波越氏は総監の高笑いを聞いて、変な顔をした。総監は一体何と思って、この怪事を笑い飛ばしているのだろう。

「波越君、僕は警察のことにかけちゃ素人だ。だが、時には素人の考えが、君達よりも却って、正しく物を見る場合がないとも限らんよ」

「とおっしゃいますと」

警部はいささか侮辱を感じて聞き返した。

「この事件についてだね。全然別の見方をすることは出来ないかと云うのだ。……分らんかね、例えばだ、その品川という人物と幽霊男とが、全く同一人だと考えたらどうかね」

「エ、しますと、最初から一切が作り話だったという……」

「そう、僕の考えは常識的に過ぎるかも知らんが、そんな寸分違わぬ人間が、この世に二人いようとは思われぬのだ、僕の五十余年の生涯の経験にかけて、そんな馬鹿馬鹿しい話を真に受けることは出来ん」

「併し、併し……」

「君は通俗科学雑誌の編輯者なんてものが、どんな心理状態にあるかを知っているかね。彼等は真面目な学者ではないのだ。謂わば小説家だ、珍奇な好奇的なことを集めて、それを読者に誇示して喜んでいる手合だ。この世間をアッと云わせようという心理、それが嵩じると、狂的な企てをもやり兼ねない。