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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

群集の中に誰がいた所で、新聞価値に影響はないからね。活動写真の方は、なあに、監督の男と申合わせて、嘘の日附を書いた手紙を送って貰ったとすれば、忽ち謎がとける」

波越警部は、総監のこともなげな解釈を聞いて、あっけにとられてしまった。この老政治家は、何という想像力の持主であろう。豪傑政治家の粗雑な頭と軽蔑していたのは、飛んでもない思い違いであった。

「では、では、池袋の空家での婦人惨殺事件は? 青木の行方不明は? 大滝の片腕は?」

警部は最後の抗議を試みた。

「女の生首は人形であったかも知れない。片腕はどっかの病院の解剖死体の腕であったかも知れない。でなければ警察力を尽くして一ヶ月の大捜索に、何の手掛りも得られぬ筈がないじゃないか。少くとも警視庁の立場としては、そう信じた方が有利の様だね。青木夫婦もだ。まだどっかに生きているという考え方だね。ハハハハハハ」

総監は又笑った。波越氏にはこの変な笑い声がどうも気に食わぬ。その笑声の奥に何かしら、まだ解き明かされぬ物が潜んでいる様な気がする。

だが、論理の上では最早一言もなかった。もっと有力な証拠を握るまでは、抗弁のしようがない。