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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
その常識をのり越えて突然全く新しい事柄が起るというのは、考え得られぬことだ。この事件の奥には何かしらゾッとする様な恐ろしい秘密がある。僕はこの頃、身の毛もよだつ、ある幻想に悩まされているのだよ。科学を超越した悪夢だ。人類の破滅を予報する前兆だ」
併し、この明智の暗示的な物の云い方は、波越警部には通じなかった。彼は全く別のことを云った。
「幽霊男と共産党の握手か。と云って総監に笑われたが、君この点をどう思うね」
「僕はまともに考える。彼奴の大陰謀の一つの現われではないかと思う。宮崎常右衛門氏の紡績会社は、確か争議中だったね」
「アア、君の考えもそこへ来たね。争議中だ。男女工一団となって、まるで非常識な要求を持出している。だが、その意味で宮崎家を襲ったとすると、家人に少しの危害も加えず、何一品持出していないのが不思議だね」
「それが、重大な点だ。奴等は何かしら運び出した。併し邸内には紛失したものがない。この不気味な矛盾。……恐ろしいことだ」
「で、君はあの番附みたいな連名帳を信じるかね。第二に襲われるのは君自身だという」
それを聞くと、何故か明智は真蒼になった。