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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

明智は困惑の極、救いを求める様に宮崎氏の顔を眺めた。この変な、名探偵にも似合しからぬ仕草は、已に二度目であった。

「つまり、あなたは、この犯罪は全く解決不可能だと考えられるのですか」

宮崎氏は不満の色を浮べて云った。

「そうです。……併し、若し、そういうお答えでは満足出来ないとおっしゃるならば……」

「エ、すると何か……」

宮崎氏は果し合いでもする様な、恐ろしい目つきで、名探偵の顔を凝視した。

「恐ろしいことです。いや、寧ろ滑稽なことです。併し、同時に算術の問題の様に、簡単明瞭な事実です。唯一にして避くべからざる論理的帰結です」

「それは?」

「それは、つまり……」明智は三度、救いを求める様なみじめな表情になった。「信じられぬ。私は、その理論の指しているものを信じることが出来ないのです。怖いのです」

「云ってごらんなさい」

「私の留守中、娘さんに近づき得た人物は、天にも地にもたった一人であったと申上げるのです」

「たった一人? それは、つまり、わしのことでしょう」

「そうです。あなたです」

宮崎氏は妙な顔をして、目をしばたたいた。

「すると君は、娘を殺した犯人は、娘の実の父親であるわしだとおっしゃるのか」