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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

「不幸にして、僕はそれを信じることが出来ません。併し、あらゆる事情、あらゆる論理が、その唯一の人を指しています」

「君は、本気で云っているのですか」

「本気です。軽蔑して下さい。僕はこの明々白々な理論を肯定する勇気がないのです。そこには、人間力の及ばない不思議な力がある。この力が何物であるかをつきとめ得ない以上は、僕は無力です」

明智は訳の分らぬことを云って、不甲斐なくも渋面を作った。口惜しさに今にも泣き出そうとする子供の表情だ。

「君はどうかしたのじゃありませんか。何を云われるのか少しも分らん」

宮崎氏は、皮肉な微笑を浮べて、この有名な素人探偵の苦境を見下した。

「だが、僕は、この不可思議力の本体をつき止めないでは置きません。その上で、あなたの前に頭を下げて今日の無礼を謝するか、それとも、宮崎常右衛門氏に縄をかけて、断頭台に送るか」

常右衛門氏はこの暴言を黙って聞いていたが、明智には答えないで、呼鈴を押して、書生を呼んだ。そして、書生の青山が這入って来たのを見ると、

「この気違いを叩き出すのだ」

と命じた。

「明智先生をですか」

「そうだ。この人は気が狂ったのだ。