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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

貴様こそ一体何者だ。イヤそれは聞かなくても分っている。貴様だな長い間俺を悩まし続けた怪物は」

今帰宅したばかりの贋の品川が、平然として呶鳴り返した。

分った分った。図々しい幽霊男は、明智の追跡に耐えかねて、咄嗟の思いつきで、本当の品川の家へ逃げ込んだのだ。何という大胆不敵な、併し奇想天外の思いつきであったろう。並べて見ても見分けのつかぬ二人の品川が、お互に相手を贋物だと云い合っているのだ。

その内に、本当の品川が、やっと明智の変装姿を見分けた。

「アア、明智さんじゃありませんか。一体これはどうしたということです。あなたの前にいるのが、例の幽霊男ですよ」

すると、贋の品川も劣らず、まくし立てる。

「オヤ、あなたは明智さんですか。すると、さっきから、私のあとをつけていらっしたのは、僕を幽霊男だと誤解されたのですね。僕こそ正真正銘の品川四郎です。この男は僕の留守を幸いに、僕に化けて何か又悪事を企らんでいたのですよ。サア、こいつを捕えて下さい」

聞いている内に、どちらの云い分が本当だか分らなくなって来る。

「では、君はどうして、籠抜けなぞをして、僕を撒こうとしたのです」