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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

「オッと、そいつはいけない。赤松さん、その呼鈴は命とかけ換えですぜ」

明智が素早く見て取って、ピストルを構えながら、総監を威嚇した。

「明智君、これは一体どうしたことだ。君はいつの間に僕の敵になったのだ」

「ハハハハハハハ、私が明智小五郎に見えますかね。もっと目をあけてごらんなさい。ほらね」

明智が顔をモグモグやって見せる。

「アッ、貴、貴様は一体何者だッ」

明智は左手でポケットから、大型の麻のハンカチを取出して、総監の目の前で、ヒラヒラ振って見せた。驚くべし、そのハンカチの片隅には、見覚えのある不気味な白蝙蝠の紋章。

「ウヌ、畜生ッ」

総監は全身の力を奮い起して、背後の敵をふりほどこうとした。だが、怪物の羽交締めは、いっかな解けぬ。もう絶体絶命だ。大声で呶鳴って人を呼ぶ外はない。と思う顔色を見て取った、偽の明智小五郎は、間髪を容れず、振っていたハンカチを丸めて、総監の口へ、グイと押込んでしまった。咄嗟の猿轡だ。

瞬く間に、手足を縛られて、トランクの中に丸くなったのは、今度は本物の赤松総監であった。あばれようにも、声を立てようにも、もうどうすることも出来ぬのだ。